子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

作品8.音楽の先生との心の交流

作品8.音楽の先生との心の交流

はじける芽(131 )  2004.11.10

先生が流した感動の涙

    小学校 五年 女子
 三週間前のことでした。帰りの会が終わって、漢字ミニテストをしようと思ったけど、クラブがあったので、さよならをして、クラブに行きました。私は、音楽クラブなので、急いで音楽室に行きました。六年の卒業アルバムを作るため、写真をとることになりました。私は、一番後ろにいました。A先生も一緒に入ってとりました。写真をとったあと、A先生がとったビデオを見て、二時五分に外に出て練習をすることになりました。しかし、外スポーツがキックベースボールをしているところを止めてしまったので、六年とかが、
「何で音楽クラブがいつも使うんだよう。」
と文句を言っていました。A先生が、
「みんなごめんねえ。」
といってあやまっていました。校庭があいた後、みんなや私は、パレードのじゅんびをしました。「トップオブザワールド」という曲を校庭を一周しながら吹きました。行進が終わって、「明日への扉」を吹きました。吹いている途中、うでが痛くなってきました。私は、
(いたたた~、でもがんばらなきゃ。)
と思いました。校庭の中央で、直線になってM字になるとき、打楽器と合わなくなり、きれいな直線ができませんでした。「ゆかいに歩けば」は、とてもきれいにできました。終わったと同時に、T先生とA先生の大きな拍手が聞こえました。二年二組の担任で、音楽クラブ担当のT先生が、
「いやあーうまくなったねえ!ちゃんと回るところとか、きれいに並んでできたし、もう、すごいとしか言えないね!」」
と長い感想を言ってくれました。A先生になったとき、なんだか先生の様子が変だったので、
(どうしたのかなあ。)
と思っていると、先生の顔が、どんどん赤くなってきて、上などを見て涙をこらえていたけど、とうとう泣いてしまいました。私は、
(えー、どうしたんだろう。何か思い出した のかなあ!)
と不安になりました。みんなも不安な顔をしていました。A先生は、
「ごめんね。みんなが前よりもうまくなっていたから・・・。本当にこの子たちはすごいね。」
と白いハンカチで涙をおさえながら言いました。
(そんなに感動してくれるなんて・・・。)
と私も感激しました。
 でも、途中で放送が入って、あまりよく聞こえませんでした。終わって、楽器を片づけようと階段をのぼっていたとき、
「すごいよねえ、A先生が泣くなんて。」
とその話でもりあがっていた四年生が、階段を上って行きました。私たちのクラスのFさんが、
「うち本当にびっくりしちゃった。だって泣くんだもん。」
と言っていました。私は、
(本当にそうだよう。)
と思いました。A先生の涙を見たのは、初めてです。本当にびっくりしました。

作品分析

*いつ頃の出来事なのかがわかる。
*「急いで」という表現の中に、クラブへ早く行きたいということがわかる。
*外に出た時刻が書けている。
*ここから、会話が出てくるが、文章が生き生きとしてくる。  *「みんなごめんねえ。」と生徒にあやまれる教師の度量の深さ。
*校庭があくまで、待っていたことがわかる。 
*吹いている途中のつらさがわかる。
*二つの曲の練習内容の評価をしている。
*「大きな拍手」という表現に喜びが伝わる。
*「言ってくれました。」という表現の中に、教師への感謝の気持ちが出ている。
*A先生の様子が変なことに気がついている。
*A先生の顔の表情やしぐさをよく観察している。
*泣いてしまったときの不安な気持ちが出ている。
*そのときのみんなの不安な顔もよく見ている。
*先生のそのときの会話や「白いハンカチで涙を」とよく見ていたことを覚えている。
*教師の感動の言葉に、その時思ったことを素直に思い出して書いている。
*終わった後の、四年や五年の他の友達の反応についても、会話を入れながら書いている。

学校行事作文の書かせ方

 行事が終わると、その後に作文の時間にする。行事作文と言って、我々は批判してきた。パターン化した作品が出て、値打ちある作品はあまり生まれてこない。子どもにとって、行事本番までの間に、様々な形の感動がある。心がゆれたその日か、何日か後に日記に書いた方が、この作品のように場面をしっかり切り取り、値打ちのある「ひとまとまりの作品」を書いてくるものである。この作品は、日記を作文にしたものである。

行事に積極的にかかわる。

 学期に一つか二つは、運動会・学芸会・展覧会と向き合うことがある。そのようなイベントに、どのように関わって行ったら良いかを子どもたちも、教師も考える。ここに出てくる子どもも教師も、おたがいにいい関係が成立しているのである。教師によっては、急に大声を出したり、しかることが多くなってしまう。しかし、ある程度信頼関係がなりたっているならば、このように喜びは大きなものに発展していく。

「生きる力」を育む

 音楽や図工の時間は、子どもたちの情操教育的な面を、大きく伸ばしていき、「生きる力」を間違いなく確かのものにしていく教科の一つであろう。早朝の時間や休み時間や放課後の時間まで、子どもたちは教師の綿密な指導に応えて、切磋琢磨して力を次第につけていく。その成長の姿を、日々追って見られる所が、教師冥利に尽きるのではないだろうか。一方子どもは、その努力の成果を本番の日に最高のところまで高めようとする。この両者のころあいで当日を迎え、子どもも教師も、「胸のドキドキとくちびるのふるえ」を持って本番に備えるのである。緊張感に心の底から、喜びを感じながらである。
なお、この文章は、A先生にお断りして、子どもの成長のために、載せることを承諾していただいたこともつけ加えておく。

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