子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

作品10.自然このすばらしき教育者その2

作品10.自然このすばらしき教育者その2

きんもくせい
   愛媛県小学校二年 西原 啓子
うちのにわに
きんもくせいの木がある。
学校からかえると、
ぷーんといいにおいがする。
わたしはすぐ
きんもくせいの木の下にいった。
ジュースのにおいだ。
たべてみたくなった。
こっそりえだをおってたべた。
にがかった。
うしろでおじいちゃんが
みていた。
(『自然とともに2年』国土社〉
 もう何年か前に実際にあった話で、あまりにも有名になった話がここにある。それは、一年生を担任した先生が、校庭の片すみに咲くきんもくせいの木の所につれて行き、その甘い良い香りをかがせていた。一人の子が「先生トイレのにおい。」と言ったら、他の子ども達も一斉に「トイレのおいだ。」という声が広がった。最初、この先生は、その意味がよくわからず、首をかしげた。しばらくたって、その意味がようやくわかった。いつのころからか、トイレの中にいい香りのする品物が置かれるようになった。それは、きんもくせいやバラやレモンと同じような香りのする物質を、人工的に売り出したものである。その中で、きんもくせいの香りが大へん人気があり、自分の家のトイレのにおいと重ねて、子ども違が反応したのであった。これは、うその香りを先にかいでしまったので、本物のきんもくせいの香りが、うそのにおいにまどわされ、悲しいおかしな話が出来あがってしまったのである。

季節惑を大事にさせるには Edit

 季節惑を感じさせてくれるものは、自然の中で、たくましく成長している野草だとか、四季折々に花を咲かせてくれる木々などが、もっとも身近でわかりやすい。だから、あまり得意でない野草や木々の名前を、子ども達と一緒になって覚えたことがある。覚えるだけでなく、野草カードを画用紙4つ切りぐらいにして、一年間折々に写生して、葉や茎や花や根などをていねいに観察したりもした。多い子は五十枚以上カードをためた。
 そこで思わぬ発見をした。子ども達は、固有名詞で野草の名を覚え、自分と友だちのような感情をもつようになった。日記や詩のノートなどに、その思いを綴ることによって、ますます野草が好きになってくれた。地球上に生きている、生あるものへの親しみを感じ、命あるものを大事にしょうという気持ちも自然につちかつてくれたようだ。
 それと同時に、しっかりものを見つめる眼や、なぜそうなっているのかという物の見方・考え方も深めてくれた。したがって、文章表現力を豊かにして、生き生きとした文が綴れる子は、この野草カードでも、しっかり描いていた。また、これがきっかけで、一つ一つていねいに見つめ、とらえ直し、書き綴れるような子も増えていった。なずなや、はこベの葉をただ丸っぽく書いてしまう子は、対象物にじっくり眼をすえて描けない子であった。そういう子の作文は、いつも大ざっぱで、物をきちんととらえきっていなかった。

どのように生活を広げていくか Edit

 冒頭の詩は、子ども達とこんなふうに鑑賞しあう。
この子のすばらしい訴は、どんな一般ですか。
(ア)きんもくせいの木があることに気がついている。
(イ)ぷーんといいにおいに気がつく鼻のいい子。
(ウ)すぐにそのにおいのする木の所へ行った。
(エ)ジュースのにおい。たべてみたくなったと、その時、正直に思ったことを書いている子。
(オ)枝をおって食べたと、したことを正直に書く。
(ア)~(ウ)までは、その時の五官をよく働かせ、行動した〈生活のしぶり〉が、すばらしいと認め合う。
(エ)~(オ)は、その時に感じたとおり、した通りを、ありのままに写し取るように書いている〈書きぶり〉がよいと、ほめ合う。

 では、みんなも自分達のまわりで五官を生き生きと働かせて、秋らしい季節感のあるものを見つけて、詩に書いてみよう。 Edit

1987年10月15日

亀さんありがとう Edit

 キンモクセイの話をしてくれた教師は、昨年の5月5日のこどもの日に亡くなられた亀村五郎先生である。日本作文の会には、魅力的な常任委員の方がたくさんおられたが、亀さんもそのお一人である。百合出版から出された『日記指導』『読書指導』『赤ペン〈評語〉の書き方』『子どもを生かす作品研究』『子どもを伸ばす作文の書き方』を、すべて読んだ。作品のほとんどが、亀さんのクラスから生まれた作品ばかりであった。その作品の質に魅了される。残念ながら百合出版が、日本作文の会から手を引いてしまわれた。まだ在庫があるかどうかは確認してないが、今読んでも新鮮な本ばかりである。『アマゾン』で調べれば、間違いなく在庫はあるはずである。まずは、百合出版に連絡を取ることをお勧めする。
 1昨年、池袋の国分一太郎『教育』と『文学』実践研究会に講演をお願いした。体の調子がよくないからと言われていたが、強引に頼んで、引き受けてくださったが、結局最後は「芳しくない。」といわれて断られてしまった。魅力的な作文教師が、また一人去ってしまわれた。
2011.11.17

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