子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

第530回 豊島作文の会 11月例会のご案内(2018年)

第530回 豊島作文の会 11月例会のご案内(2018年)

第12回 国分一太郎「教育」と「文学」研究会・学習会のご案内
◆日 時 2018年11月18日(日) 午前9時~4時20分
 場 所 豊島区立 巣鴨地域文化創造館 (第一会議室)
(東京都豊島区巣鴨4-15-11 TEL03-3576-2637 *地図参照 )
*第530回 豊島作文の会 は、上記研究会に合流します。8時50分から、会場を押さえてあります。準備等ありますので、可能な方は、8時45分くらいにお集まりください。

《当日の流れ》
❏ 9:00~ 9:15  開会行事    
❏ 9:15~10:35 「児童詩の指導」実践試案 教科書教材を生かした
         4年生の児童詩の指導    鈴木 由紀さん(東京・豊島作文の会)

❏10:45~12:05   2年生の作文指導 生活の中から題材をえらんで、
         したことのじゅんに思い出して書こう   
                     梶谷 陽子さん(横須賀・逗子作文の会)
昼食 

❏13:00~14:20 6年生の作文指導  随筆を書こう ~くらしの感想文~
                     下山 智之さん(岡山作文の会)  

❏14:30~16:00 〈講演〉子どもと親に届け続けてきた学級通信・一まい文集
                   木俣 敏さん(画家・日本作文の会元常任委員)

❏16:00~16:20 閉会行事


◎10月例会報告:『‘18年版児童文詩集「東京の子」(第44集)の散文を読み合う』
《参加》工藤(記録)、日色、榎本典子、榎本 豊、田中、桐山、片桐(司会)、鈴木(敬称略)
◇1年担当 榎本典子さん、3.4年担当 工藤、5年担当 榎本 豊さん、6年担当 桐山さんで、報告があった。
《話し合われたこと》
★「選評」はどうあるべきかが問題となった。〈 「選評」の内容、表現が気になる。子どもに語りかけることを意識するからか、表現が回りくどくなっていないか。直すべきところは直すべきところとして、きちんと指摘していくべきではないのか。 〉ということである。
 昨年もこれは問題になった。「事実」(書かれている中身)に基づかないで褒めているなどが問題になっていた。選評者自身も、選評をどう書いたらいいのか悩んでいることだろうとは思うのだが。
 ちなみに、今年度の選評全部を調べていくと、 
まず、「共同研究」の選評者、小柳光雄さんと古川翼さんは「常体」で選評を書いている。
 ところが、以下の〈作文の部〉を見ていくと、次のことに気づく。
◎人間のくらしや事実を深くみつめて(1)家族とのかかわりのなかで (2)友達とのかかわりのなかで
◎子どもの意欲的な生活をひきだして(3)思い切り学んだなかで (4)自然や社会に目を向けて
上の(1)~(4)のうち、(2)の選評のみ「常体」(榎本 豊さんが書いたもの)。あとはすべて「敬体」で書かれているのだ。
〈詩の部〉の1・2年生、3・4年生、5・6年生の選評もすべて「敬体」である。
 「敬体」が悪いというのではない。ただ言うべき中身を簡潔に言い表していく時には、「常体」は効果を発揮する。「敬体」は冗長になりやすい。これだけ、「敬体」での選評が多いのはなぜなのか。「子どもに語りかける」ため、だけだはないような気がする。
★「教科書」と「授業」に関係した問題。◇「生活の中で、感じたり、考えたりしたことを書く」(したこと、見たことをていねいに思い出して書いていく)といった書き方の指導、記述の仕方の指導が、今の教科書には入っていない。観察記録文、報告文、紹介文、手紙文、意見文など、さまざまな「書く」学習が取り上げられているが、それぞれの形式に沿って書く書き方を教えるもので、他の人に上手に伝える、順序よく説明することが重視されている。パターン化された書き方は身につくが、これだけでは、自ら題材を見つけて、出来事をひとまとまりの文章として記述していく能力は身についていかない。◇散文だけではない。9月例会の鈴木さんの提案の中で紹介された「詩」を扱った箇所の教科書のコピー。あの教科書の中身は全く使えるものではなかった。教科書がこういった状況の中で、先生たちはどのように指導を続けていけるだろうか。
★子どもたちの作品を読んでの感想、意見等。◇忙しいその他、学校の中で様々な困難を抱えて先生たちが仕事をしている状況があることは分かるが、書いた作品に推考の跡がないものが多すぎる。「推考」させることをもっと大事にするべきだ。◇「推考指導」以前に、書く指導、記述指導がこれまで以上になくなってきているのではないかと感じている。
◇こんな目当てで作文を書いてみようといった導入の授業は行われているのだろうか。作品を読んでいて、なぜ書かせるのかという視点が抜けているように感じる。◇「書き出し」の書き方の学習、「ていねいに思い出して書く」とはどういうことかを理解させる学習、この二つは、何時間か時間を取って、子どもたちにやってあげるといいと思う。
★高学年の作品について特に話題となったこと。◇高学年の作品の中で、ていねいに書いてはいるのだが、何を書きたいのかはっきりしないまま長く書いている、そんな作品がいくつもあることが話題になった。5・6年生あたりは、主題(テーマ)意識を持たせる指導が大切になってくる。無駄なことは省けるようにならなければならない。そういう授業をやってあげるべきだろうという意見が出された。
◇今回の桐山さんのレポートは、題(副題)が、“『東京の子』45集 6年生の散文を読む―作品を読む教師の視点―”となっており、桐山さんからは、今回、6年生の作文に関して〈 子どもに注文をするのではなくて、教師はどう見ていったらいいかという観点でまとめてみました 〉という説明があった。子どもの文章の中身に対する明快で、簡潔な分析(説明)と辛口の評。教師に求められているものは何かなどの指摘等、とても参考になる書き方なので、桐山さんの書きぶりを以下に紹介しておく。◇桐山さんの〈 教師の視点で作品を読む 〉ということに関する話し合いは、時間の関係で十分に論議できないまま終了。12月2日(日)の例会(会場:駒込)で《詩》の検討があるので、継続して考察を深めていきたいと思う。
                                 (文責:工藤)


『東京の子』 45集・6年生の散文を読む一作品を読む教師の視点―(いくつか抜粋)
『お父さんとの会話』 P28
 「ぼくは最近、気になっている事をお父さんに聞いてみました。」というさりげない書き出しで、将来なにになろうかという漠然とした思いを医師である父親に語りかけています。そして、父親と真面目な話ができたことを「お父さんと、また、将来について話したいと思います。」と結んでいます。
 ここにこそ焦点を当てて、教師はこの作品を読むべきではないでしょうか。
 そして、学校でも、家庭でも、6年生の子どもたちと将来について話し合う世界が広がるといいなあと思いました。

『初めてねぶたを見たこと』 P29
 「夏休み中に、母の実家に行った時、地区の夏祭りに行きました。」という書き出しに続いて、「母の実家は、宮城県の災害公営住宅地区にあり、復興支援のために青森からねぶたが来ていたので」と説明をしています。このことは「いつ」「どこで」知ったのかわかりませんが、作者は知っていたのです。そうした目で祭りを見たら、地元の人と避難してきた人の交流がどう行われていたのか (行われていなかったのか)を書くことが出来たかもしれません。社会に目を向けるきっかけでもあったのに残念です。それをぬきにして、「ねぶたの人たちのおかげで、みんな笑顔になって、みんな元気をもらっていた」という結びは空疎に響きます。

『人のことを助けたい』 P30
 「私の夢は医者になることです。」とはじめに言いきっています。そして認知症になった祖母の様子(私が3年生位の時、異変一物忘れ。私が4. 5年生の時、相手が誰であるか分らない。私が6年生になってから、家でぼんやり過ごすことが増える)を観察し、テレビ番組で脳に刺激を与えると進行が遅くなると聞いて、「病気について知り、病気にかかった祖母やその他の人、けがをして苦しんでいる人を助けることができる医者になりたいです。」と結んでいますが、 観念的です。作者は祖母の介護にどうかかわっているのでしょうか。聞きたいところです。

『がんばった学芸会』 P58
 「私は、いつも声が小さいです。」という書き出しは、気の弱そうな作者の切実な思いでしよう。そこから話を展開して、学芸会で劇をするといわれた。「どうしようかな」と続きますが、これは、配役はなにを希望しようかということでしょう。錠前屋の役になって、家でも学校でも大きな声を出すために練習をする。そして本番、父母から「声が聞こえたよ」といわれて安心をした。「これからも、発表や授業中の音読などをがんばりたいです。」という作者の決意表明で終わります。学級で読み合って作者の成長を励ますといいと思います。またそれぞれにとって学芸会はなんだったのかを話し合うきっかけになる作文です。

『練習は裏切らない』 P59
 これは「もう嫌だ!」から始まります。自分の望みではないピアノの練習。「仕方なく練習している。」「上達させる気がない訳ではない。」「練習しておけばよかった」「数少ない特技の中でピアノを弾けることは一番の特技だ。」卒業式にピアノの伴奏をしたい。応募したが落ちる。先生の「練習は裏切らない」という言葉に感じて、中学での合唱コンクールに、伴奏者を目指して「オーディションに備えたい。」と決意していますが、どうなるでしょう。ピアノを弾くこと (音楽そのもの)が好きでなければだめです。それに適性もあります。

『努力の結果』 P62
 漢字が苦手な子の作文です。しかし、この作文を見る限り、漢字が十分書けています。「ぼくは勉強が苦手だ」「どうせできない。やってもむだだ。」という考えに追い込んだのはなんでしょう。点数を競うからではないでしょうか。「テストが始まった。漢字のテストだった」という毎日ではないでしようか。「みんなをこれからも追いかけて、いつかは追いつきたいと思っている」という覚悟を読むと悲しくなります。教師は漢字が好きになる授業をすべきではないでしょうか。

 今回は、「はじめ」と「おわり」に注目して読みましたが、どの作品も、題名や書き出しに対応してまとめが書かれています。そのまとめは、
決意でおわるもの 4作品
願望でおわるもの 2作品
感想でおわるもの 3作品 です。
特に、決意でおわるまとめは「子どもの意欲的な生活をひきだして」に分類された作品に多いです。「思いっきり学んだ」のなら満足感につながるのではないでしょうか。やたら「がんばるぞ」とまとめさせるのはいかがなものでしょう。 「がんばる」とまとめている作品が、そろって短文なのも気になります。 (桐山)



「巣鴨地域文化創造館」への行き方
(1)JR山手線「大塚駅」(北口)下車
北口を出てすぐ右側の都電荒川線「大塚駅前」から、三ノ輪駅行きに乗車。巣鴨新田、庚申塚と2駅乗り、庚申塚で下車。下車して、右へ、踏切を渡ってください。「巣鴨地蔵通り商店街」の看板が見えますので、そのまま4分ほど歩いていくと、右手に「巣鴨地域文化創造館」が出てきます。
(2)JP山手線「巣鴨駅」(中央口)下車
中央口を出て右側の交番をすぎていくと、斜め左前方に、「巣鴨地蔵通り商店街」という看板と、赤いアーケードが見えてきますので、そこを目指して進んでください。あとは、商店街を見物しながら歩いていくと、左手に「巣鴨地域文化創造館」が出てきます。こちらのコースは、巣鴨駅から約15分ですが、下町らしい、いい雰囲気で、お勧めです。
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