12月9日(水) 東京新聞への投稿
12月9日(水) 東京新聞への投稿
研究会仲間の添田さんにも応援していただいて、東京新聞の投書欄へ投稿した。
学術会議任命拒否を曖昧に終わらせるな
元教師 榎本 豊(75才) (埼玉県川口市)
臨時国会が閉会した。政府によって日本学術会議の任命拒否の理由がいまだに説明されていないことに私は強い危惧をいだいている。
私は小学校の教員時代に生活綴方とよぶ作文教育と人権教育に力を注いできた。そこで出会い,詳しい指導を受けたのが国分一太郎先生である。
国分先生の生前最後の著作は,「小学教師の有罪」という本である。治安維持法によって有罪判決を受けた経験と先生を逮捕した特高警察官砂田周蔵がテーマである。国分先生の教育実践を徹底的に弾圧し、虚構の調書を作り上げ犯罪者にした。その後、全国で三百名あまりの生活綴方に熱心な小学教師が逮捕され,教職を追われている。しかし,不思議なことに,なぜ生活綴方教育が犯罪になるのか,その理由が現在もわからない。生活綴方は,児童が見たこと聞いたことを自由に書かせ,みんなで考える授業である。それが治安維持法に摘発されたというが,その生活綴方の何が悪いというのだろうか。
国分先生を逮捕し,その後の生活綴方事件を主導した特高警察官は,戦後も追放を免れて,アメリカに留学して出世し,警察学校における警備公安警察の教育にたずさわったという。警察学校の教え子のなかには,今回の任命拒否を主導した杉田官房副長官がいたのではないだろうか。生活綴方運動を弾圧した理由を明らかにしなかったように,今回の任命拒否の理由も明確にしないつもりだろう。この問題のあとには再び作文教育を犯罪にする時代が来るのか。