子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

13号

はじける芽13号

日記はどう読みとるか

楸の読み方がわからない
柳島小 五年 深澤 良信
 きょうなにげなしに、漢字の本を見ていたら、木へんに春、夏、秋、冬の漢字があった。おもしろいので、ぼくが、お母さんに、
「木へんに春、夏、秋、冬の漢字あるんだよ。知ってた?」
と言った。そしたら、お母さんが、
「知ってるわ。木へんに春は椿(つばき)。夏は榎(えのき)えの本先生のえのじゃない。冬は、柊〈ひいらぎ〉秋は…あら、何だったかしら。」
と言った。お母さんも、木へんに秋も、わからないんなら、辞典で調べようと思った。お母さんから、新しゃく漢和辞典というのを貸してもらった。お母さんから、
「まず木へんの所をさがして、秋の画数の所を見ればいいのよ。」
と、教えてくれた。まず、表紙のうらに、部首のさく引がのっているから、そこで木へんをさがした。ぼくは、すぐに見つけた。四九二ページだった。すぐに、そのベージを開いて、秋の画数、九画の所をさがした。それもあんがいすぐ見つけた。木へんに、秋の音よみは、シュウ、訓読みが、ひさぎだった。楸(ひきぎ〉は、植物で、ノウゼンカズラ科の、落葉高木と書いてあった。他にも、椿は、ツバキ科の常緑高木、柊は、常緑低木で、ソロパン玉に使わている。榎は、けやきにたニレ科の落葉高木と書いてあった。ぼくは、木へんに春夏秋冬があるなら、人ベんにもあるだろうと思って調べたけどなかった。でも、ぼくは、そういうおもしろい、めずらしい、こんなのあるのという漢字をどんどん見つけようと思う。
 1989年4月作
 五年生になり、一週間たった日に書いてきた日記である。心や体を十分に使っている生活のしぶりと、一文一文の細かい書きぶりについて考えてみたい。

生活のしぶり

①何気なく見た漢字に、興味を持つ。
②母親に、働きかけて教えている。
③母親の反応も、すなおに応じてやっている。
④母親のわからない字を、自分で謂ベる。
⑤辞典の引き方を、さりげなく教える母親。
⑥部首から、きちんと調べ方を知っている。
⑦かなりきちんと調べている。
⑧木へんから人ベんのことを考え出している。
⑨これからも、おもしろい漢字を見つけよう。

書きぶり

①いつの日か書けているが、誰が、どこでが書けてない。
②母に会話の形で話した通りの会話文。
③辞典で調べようと、その時、心の中に思った事を、その通りに書いている。
④辞典を引く順が、その通りに書けている。
⑤調べた漢字の意味を、ていねいに書いている。
⑥木へんから人ベんの事を思った事を書いている。
 日記の文章は、子ども達が自主的に、心に残ったことを見つけ出して書いてくる文だから、様々の生活が掘り出されて文になっている。漢字に、このように興味を持つ子は、あまりいない。母親のこの子への対応も、なかなか出来るものではない。そこの所を、全体の前で大いにほめて、認めてあげる事も、次の書く意欲につながっていく。同じような事を、他の子にもやってもらいたいので、さっそくしむけてみた。
「お母さん、木へんに春、夏、秋、冬っていう漢字知っている。」
と聞いたら、
「知らない。」
と言ったので、
「ええ、一つぐらい知っているでしょ、一つぐらい、ねえ、お母さん。」
「…木へんに冬はかえで」
「ちがうよ。」
わかりそうもないので、私は、
「柊〈ひいらぎ〉だよ。」
と教えてあげた。
「木へんに秋は、何だったけ。」
と考えていて、これまたわかりそうもないので、
「ひきぎだよ。シュウとも読むけど。」
と教えた。
1989年6月29日

教科書の寡占化

 この日記は、中高学年を持つと必ずプリントして読み合った。保護者会の時には、最初にこの文章を読むことにしている。この親子のように、何に対しても、積極的・意欲的になる親子であってほしいと言うときにも使える。「生活のしぶり」「書きぶり」の意味についても考え合うときにも、大変参考になる。かって、この作品が日本書籍の5年生の国語教科書に載せていただいた。墨田区でもこの教科書がすぐれていたので、ずっと採択していた。東京の中では、光村より採択数が多かった。しかし、職場の意見が参考程度になり、採択方式の改悪になってからは、このようなすぐれた教科書が採択されなくなった。今は、文科省の学習指導要領に最も忠実な「光村」教科書が全国シェアーも一番多く採択されている。教科書が現場の教師の意見が無視されると、とんでもない教科書が採択されてしまう。今、沖縄で起きていることは、その象徴的な出来事である。
2011.11.22

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