子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

20号

はじける芽20号

給食は民間委託より自校方式で

民間委託って何   5年男子

 今日学校に百瀬君と平田君と僕で、5時頃まで残っていた。なぜかというと、社会科のグループ学習の発表練習で残っていた。終わってから、百瀬君が体育館にほうたいを忘れたというので、かぎをかりてほうたいをとってきてかぎを返しに職員室に行った。(略)
 榎本先生が、紙を持っていたので、ぼくは、その紙を指さしながら、
「これなに。」
と榎本先生に聞いたら、
「あのね、錦糸中と両国中が、給食が民間委託になったでしょ。それをやめさせようと、みんなのお父さんやお母さん方に呼びかけるためのプリントだよ。」
と答えた。ぼくは、
(ふうん。)
と思った。榎本先生が、
「千保木君のお姉さん、給食がまずいっていってない。?」と言った。
「うん。なんか、まずいっていってたのは聞いたけどくわしくは…。」
と答えた。横で平田君が、
「うちのお姉ちゃんの学校はお弁当だけど。」
と言った。榎本先生が、
「これちょっと早いけどあげる。それで千保木君お姉さんに、どんなのがまずいのか具体的に聞いてメそしてきでくれないかな。」
とたのんできた。
「は、はい。」
そして家に帰った。そろばんに行って、すぐ帰ってきた。ごはんを食べ終わってから、母と姉に、
「お母さん民問委託って何?」
と聞いた。姉は、
「柳島の給食や前の錦糸中の給食は、調理士や栄養士は、区の公務員としての給料をもらっているけど、民問委託はいっぱんの業者が入って作るからもうけを考えて作るから、経費をうかさなければもうけにならないでしょ。人けん費、材料などでうかさなければならないから、自然に質がおちるし、まずくなるんだよ。」
と教えてくれた。ぼくは、
〈人けん費をへらすということは、少しでももうけようとするために人数をへらすから、その人数で時間内に全部の物を作らなくちゃならないから、ざつに切ったりいいかげんになったり注意力もなくなって異物が混入したりするんだな。)
と思った。榎本先生にもらったプリントを見たら、両国中学校の10月9日(月)の磯漬けというのに、流しの栓が入っていたと書いであった。ぼくは、不思議になって、
「なんでこんな物が入るんだろう。」
と言ったら、姉は
「ふつうは流しの栓が入っていたら気がつくのにね。」と言った。次に、
「給食でどんなのがまずかった?」
と姉に聞いた。
「色々あるよ。ジャガイモががりがりだったり、野菜スープは味がうすかったし、まずいんじゃないけど、この前の茶碗蒸しは、私のにはシイタケがなかったし、ある人にはどちゃんと1つ入っていたり、キューイはすっぱいし、ゼリーは量がバラバラだった。」
と言った。
ぼくは、
(お姉さんは毎日そんな給食を食べているのか。お姉さんは、民間委託の前の学校給食も食べたけど、柳島小の給食にはかなわなかった。もしこの柳島小が民間委託になったらいやだな。これからも民間委託にならないでおいしい給食が食べたいな。)
と思いました。

子どもの目はするどい

 右のような文を4人1組でやっている班日記に書いてきた。この日は姉の錦糸中の二年生になった康子さんが書いてくれた。この子は5、6年の時に担任だった子でもある。

錦糸中の給食 中二 女子

 区内一おいしかった柳島小で育ったのだから、舌が、ぜいたくになっているのかも知れないと感じていた。それだけでも十分なのに、民間委託になると聞いたときには、これ以上まずくなるの?柳島の給食がただ恋しくなった。弟にプリントを見せてもらったが、異物損入の件、ひじきサラダの中に紐が入っていたのは、私のクラスであったことなので知つてはいたが、その他にもたくさんあった事実を初めて知った。紐なんてのはまだましな方、流しの栓には本当にびっくり、気がつかないなんてことあるのだろうか?針金、竹ザルの竹、石…。口の中に入れたら危険なものばかり。たしか私のクラスにはホッチキスの針が入ってたこともあった。これだけの事実があるのに、また二校を新たに増やすなんて私には理解できない。子供が食べる給食なんだから、子供のためを思って作るのが普通だと思う。
 たしか去年、経費をうかして福祉に力を入れるようなことを言って民間委託にしたような気がする。それなのに錦糸中学校には300万円かけて作ったというランチルームがある。おまけに食器はよく割れる陶器にかわった。たしかにランチルームはきれいだし、陶器は割れやすいから注意力がつくし、体に無害という利点もある。しかし、両方に共通して言えるとは、お金がとでもかかるということ。しかし民間委託と同じ時期に行なわれたのでは、民間委託でうかせた経費をそっちへ回しているとしか思えない。中味がおいしくもないのに、回りの食器や雰囲気ばかりよくしたって、意味がないような気がする。私の友達にはランチルームがなくても、回りに友達がいれば十分給食は楽しく食べられる。作ってしまった以上は、ランチルームをこわすわけにはいかないから、使わなければもったいないけれど、ガリガリじゃがいもとか、ちょっと食べる気をなくす。一年後、カー君もこの給食を食べると思うと、柳島とのギャップで余計まずく感じるんじゃないだろうか。かわいそう。

うそいつわりを見抜く眼

 ここには子供自身が実際に自分の体を通して味わった真実のことが、きちんと綴られている。親や教育委員会の人々が、座談会の形をとって民間委託になっても、全く給食のあり方は変わってないと、墨田区広報に特集2ページの写真入りの大宣伝をしている記事がでた。そこで語られていることが、いかに美辞麗句をちりばめ民間委託を褒めちぎっても、毎日の給食を食べている子どもの側の一言の方がずっと重く意味のあることだ。
この千保木君の家族の会話の中に、今の民間委託はあやまっているということを、事実をもとに、きちんと論証している。民間委託とは経費をうかさなければもうけにならない。したがって、人件費や材料などでうかさなければならぬと、中2の眼でしっかり見ぬいている。そのお姉さんの会話をかみしめるように、人数をへらすからその人数で時間内に全部の物を作らなくちゃならないから、ざつに切ったりいいかげんになったり注意力もなくなって異物が混入すると、自分の頭で五年生でもきちんと推理している。
 また、その前の部分でも公務員としての給料を払っているが、民間委託は一般の業者が入って作るからという分の中に秘められている事実は重たい。つまり、新聞の折り込み広告などに、今年も民間の業者は、パートやアルバイトという身分で募集している。公務員の正規の職員に支払われる賃金に比べると、そのアルバイトなどという身分で民間に雇われた人の方が遙かに安い。ここに教育委員会がいくらいいことを並べて宣伝しようが、なぜ民間委託にしようとしているのかの、からくりが見抜けてしまう。調理師業務に携わっているものの給料を払う文を、安い金でもって民間委託にした方が経費がずっと浮くからやろうとしているのである。一編にやると、反対運動が激しくなるので、2校ぐらいずつにして半分近くなったら、いっぺんにすべての学校から調理師をなくしてしまおうという考えがありありと見えている。5年生の眼でもって、自校方式と民間委託とのちがいをきちんと見抜いている文だ。

また身近な問題に課題が

 中ニの康子さんの文は、自分が体験して実際に食べていることの中で比較しながらのべているので、もっと具体的な文になっている。教育委員会との交渉に使われた資料の中の異物混入の項目の中のひじきサラダの中の紐が、自分のクラスの中から出たという事実は我々読み手にせまってくるものがある。この項目にのってない事実として、ホッチキスの針が入っていたという事もびっくりさせられる。経費を浮かして福祉に力を入れるという名目で、民間委託を強行実施した。福祉とは、児童福祉は含まれないのであろうか。お年寄りと同じように、子供達も弱者の側に代表者なのだ。育ち盛りの大切なこの時期に、おいしい手作りの味、心のこもったものを食べさせてほしいと、訴えている。このような多くの人々の心のそこからの訴えに、区当局は一方的に強行しようとしている。税金は、人々の幸せのために使われなくてはならない。また、6年生の政治単元学習の1つの課題が迫ってきてしまった。区議会の中のどういう政党の人々の圧力によって、教育委員会の人々が強硬になってきているのか。その議員は、みんなのお父さん、お母さんがえらんでいるんだと言うことも、民主主義の制度を教えるときに教えねばならぬだろう。
1990年3月15日

学校現場の職員が合理化されてきた。

 私が、墨田に転勤してきた、36年前、どこの職場にも、警備員が2名おり、学童擁護(緑のおばさん)が、数人正規の職員として、常駐していた。やがて、最初に警備員が狙われた。当時の押上小学校が最初に機械警備にさせられた。学童擁護の職種も順次なくなされていった。やがて、この文にあるように、給食調理師が狙われた。墨田は、おいしい給食で有名であった。今は、すべて民間委託にさせられ、給食代行業者が、給食室に入り、調理をしている。
2012.1.22

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