子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

30号

はじける芽30号

 子ども達の生活が忙しくなり、じっくりものを見たり考えたりする余裕がなくなってきた。生活の中で生き生きとくらしている中で値打ちある題材を取材することも乏しくなってきた。親も生活に追われ、子どもと向き合って対話する場面も少なくなってきた。子どもを塾・おけいこと金を払えばきちんとめんどうを見てくれているところにまかせっきりになる。子どもの顔さえ見れば「塾行ったの、宿題やったの」と、机に向かうことだけをしむける。
 しかし、子どもはもっと別の対話を親と望んでいるのだ。学校で友達と一緒になって体を動かして遊んだことや、学校の行き帰りの心に残った感動が話したいのだ。親と向き合う対話がたとえ少なくとも、子どもにとって値打ちがあればいいのだ。親が子どもをその気にさせてしむけることは、大切な子育ての1つだ。そこから、子どもは親の顔の表情の変化や声の調子の違いを見ぬき、真の創造性・自主性・積極性を培っていくに違いない。

文ぼうぐセットをあててくれたお母さん 三年 女子

 今日、学校から帰ってくると、お母さんは、おくのへやでせんたくものを入れていました。その時に、テレピのへやのテーブルに、四角い白いはこがおいてありました。わたしは、母の所へ行って、
「ただいま、テーブルの上にのっかつてるあのはこなあに。」
と聞きました。するとお母さんは、
「ずいぶんおそかったね。」
としか言ってくれませんでした。その時に、わたしは2組の野口さんと川原さんと同じクラスのさかくらさんとねり木さんと、あそぶやくそくをしていたので、早くアパート公園に行こうと思いました。でも、どうしてもテーブルの上のはこが気になるので、わたしは
「お母さんやくそくしてるんだから、早くおしえてよ。」
と言いました。するとお母さんは、
「あのはこに入っているのは、お母さんのだからいいの。」
と言い、
「お友だちとやくそくしてきたんでしょ、まってるとわるいから早く行ってあげなさい。」
としか言いませんでした。そうしているうちに、れいぞうこの上の時計を見たら、3時40分になっていました。〈途中略〉
 わたしは、はこの中みをおしえてくれないので、だまって出て行きました。その時に、
(何かかってくれたのかな。)
とも思いました。
 家に帰ると、こんどは白いはこがつくえの上にのっていました。
「お母さん、これわたしのでしょ。」
とまた聞いてみました。するとお母さんは、
「とんかつあげるから、こむぎこつけてたまごつけてパンこつけたらしえてあげるよ。」
と答えました。わたしは、はこの中みが気になるので、5まいのとんかつにころもを一生けんめいつけて、お手伝いしました。
「ぜんぶつけおわったよ。」
とお母さんに言いました。すると、
「はいありがとう、ごはん食べてからおしえようと思ったけど、うるさいからあけていいよ。」
と言いました。やっと中みが見られるのでていねいにふたをあけると、カゴメとマークの入った赤いたまごがたのはこが入っていました。中をあけると、ノートやサインベン、のり、せんひき、クリップ、たまどの形のけしごむが入っていました。その時、こんなかわいいのはあんまり見た事がないので、すごくうれしかったです。
そして、わたしは、
「これどうしたの。」
とお母さんに聞いてみました。すると、キャベツをきざみながら、
「いつだかわすれたけど、ケチャップのあきぶくろに、おうぼけんがついていたから出したらあたったみたい。」
と言いました。そして、私は、
「お母さん、よくもの当てるね。」
と言いました。そしたら、
「まあね。」
とニコニコして言いました。
 その時に、私は、大きいぬいぐるみも当ててもらったことがあるので、びっくりさせて喜ばそうと思ってちょっと意地悪だけど、おもしろいお母さんだと思いました。
9月26日(木)の日記より

生活態度・姿勢(認識のし方・操作)

○常へいぜいの生活のしぶり

○その時々の体や心の動かし方・行動

●お母きんがおくのへやでせんたくものを入れていることに気がつく。
●テーブルの上の四角い白いはこがおいであることに気がついたことに値うちがある。
●ふしぎに感じたことをすぐに聞いている。
●はこの中味を教えてくれないのでさらに聞こうとしている。
●お母さんは、はこの中味より友達との遊びの約束を大切にしている。
●時計の時刻にも目がいくことは、自分も約束を気にしている。
●箱の中味を教えてくれないが、何か自分のものだと推理する。
●箱の置いてある場所が変わっていることに気がつく。
●自分の会話・相手の会話をよく覚えている。
●お母さんは、すぐに箱の中味を教えずお手伝いをしむける。
●箱の中味をていねいによく見ている。
●その時の自分の気持ちをすなおに出している。
●箱の中味が、どうしてあるのかのわけを聞き出している。
●以前にお母さんが当てたものをきちんと覚えている。
○お母さんが、うれしいびっくりすることをすぐに言わずに、楽しんでいたことが後から冷静に考えている。

表現の方法・技術

○文章の組み立て方。

●こまかい書きつづり方。

○学校から帰ってからの出来始まっている。
●いつ・どこで・誰が・何をがわかるように書けている。
●大きさ・色・形などが書けている。
●ふしぎに感じたことを、会話を使って書いている。
●お母さんの会話を書いている。
●その時に約束したことを思い出して書いている。
●気になっていることを会話で書いている。
●するとという接続詞がよい。
●お母さんの会話を2つに分けてうまく書けている。
●「としか」と言う書き方がよい。
●時計の場所と時刻を書いている。
○ここから場面が変わり、出かける。
●その時に、心の中に思ったことをきちんと書いている。
○ここから家にもどってくる場面。
●白いはこがテーブルからつくえの上にうつった事が書けている。
●二人の会話がよく書けている。
●その時の自分のやりたい気持ちが、行動になる事が書けている。
●ここの2人の会話もいい。
●やっとという言葉の使い方がいい。
●マークの字・色・形などをきちんと書いている。
●具体的に名を使って書いている。
●その時の気持ちが書けている。
●「そして」という接続詞一工夫。
●ここも会話をよく書いている。
●お母さんのしていることが、わかるように書けている。
●ここの「そして」も一工夫。
●母親の顔の表情をよく見て書いている。
○終わりの部分で、お母さんのしたことを分析してまとめて書いている。
1991年11月7日

親の生活のしぶりの良さ

 この子どもと親のみごとな対話。「宿題あるの?」などというつまらぬ会話はしない。むしろ、友達と元気に遊ぶことを大切にしむける。「白い箱」の中味を簡単にしゃべらない。いつだって話せるとわかっているからだ。今大切にして欲しいことはと、「友達との交流」という値打ちあることをきちんとわかっている。あれから20年以上過ぎた。このときの体験は、この子どもの心のどこかにしっかり身についているはずだ。いまは、いいお母さんなっているのかもしれない。
2012.3.14(水)

powered by Quick Homepage Maker 5.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional