子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

11月24日(土)大学生もまともな文章が書けないのは

11月24日(土)大学生もまともな文章が書けないのは

 ノンフィクション作家の神山さんが、アエラに書いた文章の中で、大学3,4年生が書いた文章が紹介されていた。それは、神山さんが「キャリア講座」で講演したときの受験生の文章だ。
「私は今で23才。30才、7年後の自分は立派な社会人になることを目標にしている」「講演を聞いて、神山さんの体験に感動された。(中略)自分が体験したことを文字で巧みな組み合わせによって、美しい景色や筆者の気持ちを読者に伝えられる」

これが大学生の文章?

 この文章を読んだ神山さんは、日本語習得中の留学生の文章ではない。都内の大学で、私の講演を聞いたあとの感想の文章である。一読して、文章がおかしいことにすぐ気がつく。今の大学生は、あとで書かれていたが、98年学習指導要領から「作文」という用語が消えた子どもたちである。今年2018年だから、教科書から「作文」という単元が消えてから20年経つ。あの時小学校1年生で入学した子どもたちは、6才だから、現在26才になっている。つまり、26才から下の年令の人たちは、小学校のときに「作文」の書き方をきちんと教わって来た人たちではない。

学習指導要領が作文を消した 

 それ以前の子どもたちは、教科書の5月頃と10月頃には、必ず教科書に「生活作文」単元が載っていた。単元によっては、10時間から15時間くらいの扱いで配列されていた。また、1年生の1学期の終わり頃の7月単元の所には、「絵日記」の書き方というページがあり、夏休み前に学習し、休み中に「絵日記」を何枚か書いて提出する課題があった。担任によっては、絵日記は、4月頃文字を覚え始めた頃、文字指導と同時に「絵日記」から「日記」指導を教えている教師もいた。つまり、文字を「清音」(アカサタナからン)から順にならい、長音(オカアサン、オトウサン、センセイ)「拗音」(チャ、チュウ、チョ)、拗長音(シャア、シュウ、ショウ)からつまる言葉(キッテ、ニッキ)などを順に習う。この中で、1番つまずく指導は、長音の所である。教科書では、そのあたりが、大変軽く扱われていて、高学年になっても間違う子どもたちが何人か必ずいる。私は、そこの指導は、かなり丁寧に教えた。

長音の指導

「豊島作文の会で、1年生をはじめて担任している藤林さんに、文字指導の大切さを話し合った。帰り道に、彼とそのことを話しながら歩いていたら、かなり興味を持たれて聞いてくれたので、ここに整理して、添付ファイルで送ります。
 子どもたちの作文を読んでいると、まだ「長音」の表記が正確にできていない子が何人かいたので、1年生の時を思い出して、「長音」の表記について復習しました。
まず、あ段、い段、う段については、のばした時に出てくる母音をつければいいことを確認しました。つまり、

あ段の長音表記>
かあさん さあかす たあざん なあに? はあもにか らあめんわあるど

い段の長音表記>
きい しいと ちいず にいさん ひいらぎ みいら りいだあ

う段の長音表記>
くうき すうじ つうしん ぬうどる ふうせん むうど ゆうれい
 ここまでは、どの子も理解できていました。
しかし、問題なのは、「え段」と、「お段」です。実は、子どもたちがいまだに間違えているのは、この「え段」と、「お段」なのです。まず子どもたちに(小3)、この□の中に何を入れたらよいかと質問してみました。
 え□ご け□さつ せ□せき て□でん へ□たい め□れい れ□てん
 3年生ですから、ほとんどの子は「い」と答えました(正解)が、やはり何人かの子どもたちが、いくつかの言葉に「え」をつけてしまいました。
 「え段」をのばす時には、のばした時の母音をつけるのではなく、「い」をつけるのです。つまり、
<え段では「い」をつける>
えいご けいさつ せいせき ていでん へいたい めいれい れいてんということになります。ところが、ここで困ることは、「え段」には発音通りに書く特例があることです。その言葉を子どもたちに考えさせて見ました。

「え段」で発音通りに書く特例>
ねえさん  ねえ ええ
「わがままねえさん、ええそうよ!」と覚えておくと、覚えやすいかも。
 さて次は、高学年でも間違える「お段」をのばす時の指導です。
「お段」も「え段」同様、基本的には発音と違った「う」をつけます。つまり、
<お段をのばす時は「う」をつける>
こうもり そうしき とうだい のうみそ ほうそう もうふ ようふく ろうか
となります。
ところがこの「お段」は、実は一番やっかいなのです。
 もうお気付きの通り、この[お段]には、特例が(発音通り表記するもの)が「氷(こおり)」「十(とお)」「大(おお)きい」「多(おお)い」など、20例にもおよんでいるのです。
 そこで、とりあえず覚えてほしい「お段」の特例の言葉を、「大きなうた」(中島幸一作詞・作曲)の替え歌で覚えました。
♪とおくの(とおくの)♪おおきな(おおきな)♪こおりの(こおりの)♪うえを(うえを)♪おおくの(おおくの)♪おおかみ(おおかみ)♪とおずつ♪とおった
 そして最後に、「ほおずき、こおろぎ、おおた」とつけくわえて終わるとさらにいいかも。」 「えのさんの綴方日記」の「えのさん日記」2016年6月2日より

1年生の入門期指導の大切さ

 私が1年生の担任なったときは、このように丁寧に指導してきた。したがって、文字指導を完全に教え終わるのには、9月の終わり頃までかかった。しかし、その頃の教科書でも、文字指導は、こんなに丁寧には扱っていなかった。したがって、小学校1年生の時に入学してきた子どもたちは、様々な子どもたちが入学してくる。自分の名前が読めて書けるだけの子供もいれば、ひらがな、カタカナ、簡単な漢字が読めて書ける子どもたちも入学してくる。その頃から、教科書は、ある程度文字が読めて書ける子どもにあわせて編集されている。そうなると、幼稚園や保育園時代に早期教育で、親の要求でかなり文字指導をしている所もある。そういうことを、担任教師が、わかって、文字の読めない子どもたちにあわせて、教えるべきなのである。

指導段階の大切さ

 このように丁寧に教えていくと、文字に対する関心が強くなり、次に簡単な一文を書いていくときに、しっかりとした一文が書けるのだ。そこから、文章の書かせ方の「指導段階」が有効になってくる。日本作文の会は、そこの指導をきちんと明らかにした。
表現意欲・・・作品を読み、書きたい気持ちを育てる。
題材指導(「なにを」)書きたいのかを決める。
構想指導・・・「はじめ」「中」「終わり」を意識させ、書き出し(きっかけ)をどこから切り取るか。中心は、どのように書いていくか。終わりをどう締めくくるか。
記述・・・出来事の順に、したとおり、聞いたとり、見たとおりに順に書いていく。
推考・・・書き終えたら、必ず読み直して、間違い字を直したり、漢字に直したり、思い出したら、付け足したりして、もう一度思い起こしをする。
鑑賞・・・出来上がった作品をみんなで読み合い、文章全体のこと、文章の部分の表現の仕方について、「書きぶり」「生活のしぶり」をみんなで読み合う。

基本は、出来事の順に思い出して書く

 こういうことを、指導の基本として子どもたちに「文章を書く楽しさ、苦しさ」を学び合った。「自分の生活の中から、心に強く残ったことを丁寧に思い出し、出来事の順に書いてみよう。」と指導したい題目を事前に黒板の目立つところに書いておく。子どもたちには、そのことを意識しながら、毎日を生活していく。そのことを意識して、決まったことは「日記」に書いてみようと伝えておく。ここに日記の大事さが出てくる。日記は、その日をふりかえり感動したことを切り取って書く大時な役割がある(題材指導)。

日記指導をする教師がいない

 担任教師は、毎日のように日記を書かせて、それをその日か次の日に読んで「赤ペン」を入れて励まし返す。子どもたちは、その赤ペンを見るのが大好きだ。ときには、それらの文章を、一枚のプリント(一枚文集)に載せ、クラスのみんなで読み合う。そのことも、子どもたちには、文章を書く楽しみに繋がる。私は、あるときは、毎日のようにその一枚文集を発行し、子どもたちに配った。子どもたちは、書くことによって、自分の生きる力を付ける。子どものバックにいる保護者とも、強く繋がることが出来る。学級崩壊などは、絶対興らない。1年の最後には、それらを、必ず保存しておいて、目次を付けて分厚い1冊の文集にして子どもたちにプレゼントする。私の家には、42年間の教師生活に作った一枚文集が、40冊近く保存されている。時々それらの文集を読み返すと、その頃の子どもたちとの生活画蘇ってくる。結婚式などに呼ばれたときなどは、それらの中から、紹介するようにしている。それだけで、出席者は、様々なことを想像しながら、新郎や新婦の子供時代に思いを巡らす。

原稿用紙と向き合わない子どもたち

 教科書の単元も、「作文」単元が出てくれば、必ずそこで時間をかけて、「ひとまとまりの文章」を原稿用紙に向かって書かせる。
 今の子どもたちは、高学年になっても、原稿用紙の書き方がわからない子どもが結構いる。教わっていないから、当たり前のことかもしれない。

「原稿用紙の書き方」

・題名は、最初の行に3マスあけて書く
・名前は、題名の次の行の下の方に書く。苗字と名前は、1マスあける。
・最初の書き出しは、1マスあけて書く。
・場面が変わったら、行替えをし、1マスあけて書く。
・会話「・・・・。」や心に残ったことは(・・・・。)、かぎカッコや、ふつうカッコ を使う。その時には、行替えをして、必ず、最初のマスから書く。
 基本この位のことは、1年生の日記指導のときに教える。日記のときにも、題名も書いていくと、書きたいことがはっきりする。

題名指導

 低中学年は、やや長い題名にする。それは、具体的に何を書きたいのかをはっきりさせるためである。
 このような手順をきちんと教えながら、出来事の中で心に強く残ったことを、じっくり思い出して書いていく。

大学生になってもまともな文章が書けないのは当たり前

 小学生のときに「作文」という言葉を奪われ、文章の書き方の手順を教わらずにそのまま大学生になったから書けないのは、当たり前。文科省は、この実態を早急に調べ、学習指導要領に「作文」という単元を入れ、文章を書く楽しさ、苦しさを含めて、教科書に載せていくべきなのである。
 学習指導要領では、報告する文章を大切にし、生活文を否定しているのだ。「報告する文章」になると、したこと、見たことなどの自分で体験した出来事は、あまりていねいに書く必要がない。「概念的な文章」を説明するように書いていけば良いのだ。すると、文体も説明形の「・・・です。」「・・・ます。」の文章になる。過去の出来事を丁寧に思い出す必要はなくても通じてしまう。まさに生活文否定の発想なのである。これでは、子どもは、きちんとした発達段階にそった「文章表現力」は育てることは出来ない。

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