子どもたちの文章表現指導を誰にでも出来る一般化理論の構築・えのさんの綴り方日記

12月12日(金)人生の贈りもの その5

12月12日(金)人生の贈りもの その5

(人生の贈りもの)経済学者・政府税制調査会長代理、神野直彦:5 世捨て人になり人生を総括したい

2014年12月12日16時30分
神野さんの家族と両親。後列中央が神野さん=1982年、妻の和子さんが栃木・那須で撮影
――日産自動車を退社し、東大の大学院に入ります
 会社をやめて1年間、大学院受験に向けて勉強しました。子どももいるし、報われるか不安だったので、合格は大学よりうれしかった。大学を卒業して7年も経っているのに、同じ大学院の新入生約20人の中に大学時代の同級生が2人いました。東大闘争の影響がいかに大きかったかということです。2人とも優秀でしたが、早世した。生き残った者の負い目で何をやればいいか考えさせられました。
 ――神野さんの研究室から2人の知事が誕生するなど、教え子に恵まれました
 山口県知事の村岡嗣政君と、三重県知事の鈴木英敬君です。村岡君は仲人も務めました。村岡君と高校時代からの付き合いだった奥さんは、東大に進んだ村岡君についてきて、東京の看護師の学校に入りました。鈴木君は経済産業省の出身。国会議員の選挙に落ちて心配したこともあります。シンクロナイズド・スイミングの武田美保さんと結婚しました。
 ――2009年、研究が評価されて紫綬褒章を受けました
 経済学に社会学を採り入れる財政社会学を提唱し、少し褒めてもらいました。人間は三つの場で役割を演じています。職業として働く生産の場、家庭を軸にした共同体、そして被統治者や統治者としての政治の場。人間がどう行動するかは、単なる損得勘定だけでなく、家族に注ぐ愛情や、政治の場における正義といった動機づけに影響される。そんな視点から財政をとらえるのが僕の方向性です。
 ――「偉くなるな」という神野家の教えを破ったのでは
 いや、結果的にほどほどです。東大では経済学部長はやっても副学長はお断りしました。国の審議会の役職を担っているのは、東大の恩師、佐藤進先生に「声をかけてもらったら、勉強になるから引き受けろ」と言われたからです。
 ――消費税率の引き上げが先送りされました。税制の専門家としての考えは
 これまでの消費増税は「直接税と間接税の比率の是正」「所得税から消費税へ」という言葉のもと、所得税や法人税の減税のために行われました。今回は社会保障制度の維持と強化を目的に税収を増やすための増税でした。本来なら、増税しないと社会保障のシステムが機能不全に陥ってしまい、後戻りできない状況です。消費増税を景気循環で判断するといっても、デフレでもインフレでも増税できないことになる。インフレではもっと便乗値上げが起き、価格上昇を激化させます。
 ――著書などで、早めの引退をほのめかしています
 日本には「世捨て人」という観念があります。頭がしっかりしているうちに人生を総括したい。周囲に生かされているという意識があるので、家族や友人との時間をもっと大切にしたいと思っています。 (聞き手・西前輝夫)=おわり

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