8月21日(月)「むのたけじ」発言その4
8月21日(月)「むのたけじ」発言その4
人類よ お前はどこへゆく
この前、一度死んだんだ。でも、生き返った。5月9日の検診で肺炎を起こしているのが分かった後、入院して約1カ月間は自分が生きているという意識を失っていましたもんね。分からないの。混濁の中で完全に私の意識は行方不明になっていた。当人が自分は生きていると意識できていなければ、生きているとは言えないでしょ。そういう状態だったわけです。
人間の生命は、自然にすーっと生きているのと、死と闘って生きている命があるでしょ。それとは別なんだ。私の命は、死のふちにいたとき、生き返る方向に向かっていなかったけれど、はい上がってきたような気がしているんです。医学の力でそうしてもらったのだと思いますけれど。
この命をつないだものは、普通の命に対する感覚とはだいぶ違うんです。難しい問題ですから今はこれ以上言えないけれど、もう少し時間が経ったらしっかり話せると思います。
この年になると、自分がいつ死ぬか分かるはずだと言ってきたでしょ。そろそろ終わりだなと分かるはずだと。今はまだそういう感覚になっていませんから、もうちょっと生き延びそうですね。あわてるな、あわてるなと、どこかから言われているんだな。
ともかく、死んでいられないというのはありますね。今の世界の状態に不満がありますから。安定がないんだ。しくじってもここで止めることができるというめどがない。しくじりがどこまで行くか分からない世界になっている。国内の情勢を見たってそうでしょ。日本はこうなる、なんて誰も言えないじゃない。
入院前から、伊勢志摩サミットの警備で大騒ぎしていた。サミットとは世界の先進国のトップが集まって世界中を良くするための会議なんでしょ。そんなに良い会議なのに、何であんなに厳重な警戒態勢をとるの。テロの対象にされると思っているんでしょ。
そう思う理由はなんだ。ものを考えるのが73億人の人類全体という立場ではなく、自分たちの国のための話し合いをしているからでしょ。周りもそう思い、参加国の首脳もそう自覚しているからじゃないですか。「人類人」として考える会議であれば、あんな警備態勢は不要だったんです。
もう少し元気になってあれこれ考えることができるようになったら、「人類よ、お前さんはいったいどこに行くつもりなんだ」ということを問い詰めながら、おれはこう思うと発言していきたいな。
寝てばかりだから頭の働きが良くないんです。人間は立って歩く生き物だからね。でもまだ体力がない。急がずリハビリをして、杖をついて1キロくらい歩けるようになりたいね。
(聞き手・木瀬公二)2016年 6月17日(金)